この週末に散歩を兼ねて上野まで歩き、都心で数店舗を展開する回転寿司店に立ち寄りました。
10年ほど前、仕事帰りに池袋の同店をたまに訪れていましたが、最近はインバウンドの影響か、どちらも通りかかるたびに満席だったり行列だったりするので、足が遠のいていました。
そんな訳で、近頃はスマホ予約のできる大手チェーン店を年に数回ほど利用していましたが、ネタの多様性に乏しいのが難点でした(つまり早々に飽きてしまう)。
かつては、大手でも魚種が豊富だったと記憶していますが、最近は漁獲量やコストの問題なのでしょう、サーモンやマグロなどの人気魚種に絞り、それらをアレンジしてネタ数を増やし、さらに麺類やスイーツ、つまみ、ドリンクなどを充実させているようです。そう、その実態は、ファミレスなのです(いま気づいた)。
さて、お店の前まで来ると、店外に二組ほど、店内に10人ほどが待っています。
一旦、通り過ぎて、別の用事を済ませて戻ってみると、思いの外、回転が早そうな様子。10分ほどで席に案内されます。
席はカウンターのみ、隣客と肩が振れそうな距離でメニュー表はシェア、皿を積み上げるスペースも十分ではありません。しかし、ネタは豊富で、本日のネタもたくさん(すでに約半分は売り切れ)。お値段は記憶の1.5倍くらいに上がっていましたが、ワクワク感があります。
回転レーンの向こうでは、3人の職人が連携し、満席の客から次々とコールのかかるオーダーを捌いていきます。客の年齢層は高めで一人客が多そう。グループでも3人くらいでしょうか。そのため、回転が早い。ほぼ同時に隣に座った妙齢の女性は、魚卵系のお高めのネタ中心に2千円弱を食べて、おそらく20分ほどで席を立ちました(かっこいい)。次にそこに座ったのも女性の一人客です。
全国に数百店を抱える大手では、メニューや広告、オペレーションまで統一されたフォーマットで提供する必要があります。量を安定的に確保できない魚種をメニューに加えることは、例外業務が増えるので難しい。現場で働く人も職人のようなスキルはないので、例外対応は基本的に不可能です。よって、家族連れをターゲットにしたファミレス的な展開(定型・定番×量の供給)が戦い方になるのでしょう。
一方で、個人店は必要量(=仕入量)が限られるので、単価を下げにくい。廃棄のリスクも大きい。しかるに接待や非日常の体験といった用途に向けて希少な食材や空間づくりにお金をかけ、調理や接客も丁寧に行なって、お酒を含めて客単価を上げるのが定石となりそうです(有名店の戦い方)。住宅地の個人店は減っているように見えますが、商圏ニーズ×アイデア(地域密着型)で活路はあるように思います。
さて、今回のような都心の商業地に数店舗を展開する場合には、ある程度、魚種を増やしても、安価に提供することが可能となります。職人が握るので、本日のネタ(例外)にも対応しやすく、店舗間でスタッフや材料の融通もしやすいはず。また、寿司に特化して提供することで、回転数も上げやすい。居心地のよい座席はかえって商売の妨げとなります。これはカウンターメインのラーメン店なども同様でしょう。椅子のない「立ち食い寿司」もこれに近いですが、回転寿司の形態をとることでカジュアルで入りやすい雰囲気を演出することもできそうです。実際、後者の方が価格設定は安いように思います。
築地あたりでは、席数が多く、複数の職人がカウンター越しに握り、カジュアルな接待に使えそうな(そこそこお高い)お店もあり、寿司店の形態も多様です。
久々のローカル回転寿司店への訪問で、図らずも気づきと勉強の機会になりました。そして十分においしかった。待ち時間も思ったほどでなかったので、また利用したいと思います。
なお、どちらの回転寿司でもサラダ巻きを欠かさないのが、信州人の矜持です。