今回は「会社の価値」について考えます。
会社の価値って何でしょう?
M&Aなどの場面では、「企業価値」として、簿価や時価をはじめとする金額での評価方法がありますが、ここでは少し抽象的な話をしたいと思います。
強みと需要が重なる部分
結論を先に述べてしまいますと、「会社の価値」とは、「会社の強み」と「社会の需要」が重なる部分と言うことができます。
「会社の強み」とは、会社が持つ技術やノウハウ、人材、設備、商品、サービス、サプライチェーンなどなど。これらは「経営資源」と呼ばれ、単独で、あるいは組合せにより強い独自性を持つと、他社との「差別化」が可能になり、「競争優位」になるとされます。
一方の「社会の需要」とは、大なり小なり、潜在的なものを含めて、現時点の社会が必要とするコト。つまり、会社の強みのうち、社会に必要とされるものだけが、「会社の価値」となりえます。会社が提供する商品やサービスは、この「コト」を実現するためのツールでなくてはなりません。
社会の需要は、「社会の価値観(志向)」と言い換えることができるかもしれません。
昨今では、長らく隆盛を誇った産業や企業が、短期間のうちに衰退し、最悪の場合には、消滅してしまうことも珍しくありません。これは、会社側が変わらずとも、需要側(価値観)が変化(移動)し、重なりが失われたからと言えます。あるいは、会社が誤った方向(需要とは異なる方向)に変化してしまったケースもあるでしょう。つまり、強みがあっても需要との重なりがなければ、残念ですが、会社の価値は失われてしまいます。
需要の変化に対応できるか
特に今日では、従来の「うまい(品質:Q)、安い(コスト:C)、早い(納期:D)」だけでなく、「倫理感(正しさ:E)」も非常に重要な要素です。重なりを失わないためには、需要の変化に合わせて、会社側も変化(追随)することが求められます。しかし、長らく隆盛を誇った産業や企業ほど、この変化への対応が苦手とされ、「成功の罠」あるいは「競争の罠」と呼ばれています。
現代の経営環境は、「政治(P)、経済(E)、社会(E)、技術(T)」が複合的、かつ高速で変化し、さらに「気候変動」や「国際的紛争」、「パンデミック」等も加わり、予見性が極めて低い状況にあります。しかし、社会のある限り、従来の需要が失われるだけでなく、必ず、新たな需要も生まれています。そして、その萌芽は、お取引先やお客様の何気ない一言や従業員の小さな気づきなどに隠れています。ただし、その発見には、常識を疑い、わずかな風向きの変化を感じとる感覚が必要です。既存のサービスに何かを一つプラスするだけで新たな需要に応えられるかもしれません。上図の「会社」を「商品」や「サービス」と読み替えれば、それぞれの価値を考えることもできます。
冒頭で他社との差別化に触れましたが、これは需要に追随できている(顧客志向である)ことが前提です。経営者のみなさまには、次の豊かな社会の実現ため、こうした社会需要の変化を「チャンス」に、自社の強みを見直し、会社の価値、商品、サービスの価値をアップデートしていただきたいと思います。